ホンダの50㏄以下のモデル「スーパーカブ50」
ホンダの50㏄以下のモデル「スーパーカブ50」

 「パブロフの犬」の条件反射ではないが、一定の音や映像で無意識に反応が起こることがある。当方の場合、子どもの頃から脳裏に刻まれてきたのが、二輪車「スーパーカブ」(50cc)のエンジン音だ▼夜明けごろの新聞や昼間の郵便の配達でよく使われている。フルスロットルからアイドリングの状態になり、バイクスタンドを「カタッ」と立てる音がすると、「待ち人来たれり」とばかりに少し身を乗り出す。令和時代の若者たちには、もはや理解してもらえないかもしれない▼かつては燃費がものすごく優れていることから、大学生も通学などに利用していたが、近年はカブはおろかミニバイクに乗っている学生をあまり見なくなった▼時代の流れというべきだろうか、スーパーカブの生産終了のニュースに触れた。理由はユーザーの減少だけでなく、規制により、排出ガスをきれいな状態で空気中に戻すことが難しいためという。規制は今に始まったことではないが、「カブよ、おまえもか」と言いたくなる。一度も運転したことがないのに悲しくなるのは、日本の暮らし、技術力、あらゆるものを象徴しているように思えるからだ▼人は無音の中では、到底生きていけない。清浄化、静音化の流れは、全く結構なことではあるが、エンジンしかり、黒電話しかり、その時代を象徴した音がある。さて、日本人は次にどのような音を紡いでいくだろうか。(万)