思わぬ言葉に耳を疑った。松江市内で幼稚園の年長児と小学1年生の交流授業を見学した際のこと。一人の女児に笑顔で話しかけられた。「きゅうきゅうしゃになる!」。
救急車? 聞き直してもそう聞こえる。改めて尋ねてようやく納得した。「救急車」ではなく「研究者」だった。単純な聞き間違い。ほっとしたせいか、何の研究者になりたいのか聞き忘れた。
その3日後、思わぬ言葉に「また聞き間違いか」と耳を疑った。「酷暑乗り切り緊急支援として8、9、10月の3カ月について、電気・ガス料金補助を行います」。通常国会閉幕に合わせて記者会見した岸田文雄首相が、5月使用分を最後に終了した補助を一転して復活させる方針を打ち出した。
物価が高止まりする中、家計の負担が減るのはありがたい。とはいえ、火力発電などの燃料となる液化天然ガス(LNG)や石炭の輸入価格が落ち着いたとして、いったん終了したはず。電力業界からは「足元でLNG価格は下落しており、政策の整合性が取れない」という声も聞こえてくる。何ともちぐはぐで唐突感が否めない。
それもそのはず。内閣支持率は低迷が続き〝救急搬送〟が必要な状況。9月の自民党総裁選を前に、続投へ意欲を見せる首相が政権浮揚のアピール材料にしたいのだろう。ただ国の財政負担は膨らむばかり。冒頭の女児が財政を立て直す研究者になってくれないだろうか。(健)