1990年代にアルバム「サイアミーズ・ドリーム」(93年)、2枚組の大作「メランコリー、そして終わりのない悲しみ」(95年)を発表し、一時代を築いた米バンド「スマッシング・パンプキンズ」。代表曲「トゥデイ」など、オルゴールのような優しいメロディーと、ごう音ギターが融合した印象的な曲をいくつも発表し、あまたのオルタナ/グランジ系のバンドとは一線を画した。
躍進の裏側で、日系メンバーのジェームス・イハが傑作ソロ・アルバム「レット・イット・カム・ダウン」(98年)をものにしている。バンドでは毎晩のようにステージやスタジオでディストーションのかかったギターを弾き続けたため「もうマーシャル(ギター・アンプ)を通した音をプレイしたくなくなった」そうで、オーガニックな作風に仕上がっている。
このアルバムを聴いて思い浮かぶのは、穏やかな季節の休日の風景。スマパンにも根底に温かみを感じる曲はあるが、ここで鳴らされているのは、没入していく底なしのメロウ&ラヴリーな世界。「ビー・ストロング・ナウ」「シー・ザ・サン」など、収録曲はどれも極上のメロディーが惜しげもなく詰め込まれ、どこから聴いても柔らかい日差しの中でまどろむような心地よさに包まれる。(銭)