岸首相退陣後に発足した池田内閣で、初の女性閣僚として厚相に就任した中山マサ衆院議員(前列左)=1960年7月
岸首相退陣後に発足した池田内閣で、初の女性閣僚として厚相に就任した中山マサ衆院議員(前列左)=1960年7月

 日本初の女性閣僚が誕生したのが64年前のきょうのこと。池田勇人首相が新内閣を組織し、厚相に中山マサ氏(1891~1976年)を起用した▼長崎県で生まれ、米国の大学を卒業後、1947年衆院選に旧大阪2区から出馬し初当選。同期には田中角栄、鈴木善幸、中曽根康弘の首相経験者3氏に加え、後に島根を地盤にし、衆院議長も務めた桜内義雄氏もいた▼初の女性起用には、岸信介前首相時代の安保闘争で亀裂を深めた世相を和らげる狙いもあったとされる。中山厚相の在任期間はわずか5カ月だったが、母子家庭への児童扶養手当支給を実現するなど実績を残した▼昨年9月に発足した第2次岸田再改造内閣の女性閣僚は過去最多の5人。女性起用の壁は取り払われたとはいえ、起用する側の意識は変わっていないようだ。それを象徴するのが改造後、岸田文雄首相が発した「女性ならではの感性を発揮してほしい」という言葉。「女性を能力で判断せず、対等な存在と見ていないことが透けて見える」と批判を浴びた▼そんな首相は「政治とカネ」問題を受け、4月の衆院島根1区補選で自民党候補が敗れるなど青息吐息だ。次期衆院選を見据え「岸田首相のもとでは選挙は戦えない」という声が党内に拡大。世相を和らげるため、初の女性首相を待望する声もあるらしい。ただ、そんな見え透いた思惑では、国民の不信感は取り払えまい。(健)