1991年6月の日曜夜、世界最高峰の自動車耐久レース「ルマン24時間」の経過を1時間遅れで伝えるテレビ番組が始まった。15分後、広島市の自宅で画面に見入っていたマツダの技術者、清水律治(62)に、現地に出張中の上司から電話が入る。「勝ったよ!」

 日本メーカー初の総合優勝。自分の作ったエンジンが世界の頂点に立った。清水は妻と抱き合い、湧き上がる喜びに体を震わせた。「仕事で泣いたのはこの時だけです」

 快挙を成し遂げたのはマツダの誇る「ロータリーエンジン」。だが良い時は長く...