スーパーで品薄となったコメの商品棚=8月23日、東京都練馬区
スーパーで品薄となったコメの商品棚=8月23日、東京都練馬区

 「コメが売ってない」と嘆いていた妻が得意げに連絡してきた。聞けば、夏祭りの抽選会で5キロ米が当たったという▼仕事から帰宅し、喜ばしい当選の品を見ると、これまた珍しい北海道のブランド米「ゆめぴりか」だった。米袋には銘柄よりはるかに目立つ大きな文字で「八十九」とある。はて、何だろう? 特設サイトの解説を読んで理解した▼昨年産は北海道も記録的な高温の影響でブランドの品質基準を満たす原料が不足し、基準をわずかに下回るゆめぴりかをサブブランドで売り出した。「米」は漢字を分解すると「八十八」となり、収穫するまでに八十八回もの手をかけるためという説がある。八十九とはおいしさを追い求め、もうひと手間かけたコメがコンセプトだそうだ。ちなみに基準品は「ゆめぴりか 粋」。もう一つプラスした「九十」の文字が入る▼よく考えられた売り方だと感心しつつ、コメ余り時代の生き残りを懸け、手間と価値の足し算を重ねてきた高級ブランド米戦線は曲がり角を迎えていないか。市場では不足し、求められているのはプレミアムではなく、値頃感があり確実に買えるコメなのだろう▼品薄による値上がりや台風の影響が気になるものの、<新米や何はともあれいたゝきて>(正岡子規)。もうそろそろ売り場に出回り始めるはず。これほどまでに待ち遠しく、〝有難味(ありがたみ)〟をかみしめていただく新米の秋はない。(史)