海と山に囲まれた離れ小島のような集落、熊本県水俣市の茂道(もどう)。水俣病が公式確認される2年前の1954年、地元紙が「猫てんかんで全滅」と初めて報じた場所だ。祖父母と両親が重症患者という家の長男、杉本肇(63)は漁師、水俣病資料館の語り部、コミックバンドのメンバーという多彩な顔を持つ。茂道に住み、活動を続けている。

 

初めての患者

 杉本は61年、茂道の漁師の家に生まれた。祖母は茂道初の水俣病患者だ。発症した59年当時、ラジオで実名を報道され、一家は...