自民党総裁選への立候補を表明する石破茂氏(右端)=8月24日、鳥取県八頭町
自民党総裁選への立候補を表明する石破茂氏(右端)=8月24日、鳥取県八頭町

 18年前の冬、鳥取県政界は混乱していた。当時の片山善博知事が定例会見で突然、次期知事選への不出馬を表明。クリスマスだった。後継選びでは、前副知事の平井伸治氏の擁立を主導した経済界に自民党県議の一部が反発。石破茂衆院議員(鳥取1区)の擁立論が持ち上がった。

 当時40代。閣僚も経験し、国会議員として前途洋々に見えた石破氏本人もその気があった。父・二朗氏は1958年から4期にわたり「石破県政」を築いた。背中を見て育ち「知事の仕事に憧れがあった」と後に周辺に漏らしている。

 結局「石破カード」が切られることはなかった。「銀行員を途中で辞め、国会議員も途中で辞めるの? ふらふらしてはいけない」。悩む夫にかけた妻の言葉が決め手になったという。

 自民党総裁選が12日に告示される。5度目の挑戦となる石破氏には党内で「後ろ足で砂をかける」「後ろから鉄砲を撃つ」との評価がある。一方、国民世論に近いのが強みで「最後は石破カードがある」との声も聞かれる。

 先月24日、地元・八頭町での立候補表明で「38年間の政治生活の総決算。最後の戦いになる」と語る姿に、18年前に見た迷いはなかった。「政治とカネ」問題にけじめをつけなければ、党の再生はない。ぶれずに改革を進める姿勢を貫き、党の国会議員の頂点である総裁、そして首相の座にたどり着けるか。「初志貫徹」の結果は27日に出る。(添)