さくら小学校の校庭の一角にあるリンゴの果樹園=2018年10月、出雲市東福町(資料)
さくら小学校の校庭の一角にあるリンゴの果樹園=2018年10月、出雲市東福町(資料)

 まだまだ暑い日が続くが、小さな秋を感じている子どもたちがいる。出雲市東福町のさくら小学校は、校庭の一角にリンゴ畑が広がる。25年前、地域住民の協力で造られた学校専用の果樹園。広さは約2千平方メートル。つがる、ひめりんご、王林、ふじ、ジョナゴールドと5種類の木が100本以上植わる▼学校がある平田地区は西条柿の産地。日当たりの良い南向きの斜面が多く、土壌は重粘土質でミネラル分を含む。果樹栽培に適しており、学校では地区にたくさんある柿以外の果物を作ろうとリンゴが選ばれた。土地の力を実感できる生きた教材が校内にあるのはうらやましい限りだ▼もちろん児童が栽培に関わる。今季は6月に、余分な果実の摘果と病害虫から守るための袋がけに取り組み、夏休みの終わりに、つがるを収穫した。そのまま食べたり、6年生がジャムにしたりしたという▼元気いっぱいの子どもたちの声をそばで聞きながら育った果実のエネルギーはどれほどのものか。昔から「稲は人の足音を聞いて育つ」という。頻繁に田んぼへ行けば、虫や病気に素早く気付けて対応できるということだろうが、大事にされている、愛情を受けているという「自己肯定感」が稲にも芽生え、成長を促しているのではないか。それはどんな生き物も同じだ▼以前、機会を得てさくら小のリンゴをいただいた。素朴な甘味と酸味に体が喜ぶのが分かった。(衣)