米子市など鳥取県西部で新型コロナウイルスの感染が急拡大し、大都市と同じ様相を呈している。感染経路を追い切れない事態を重視した平井伸治知事が対策のギアを上げ、飲食店に営業時間短縮を要請する検討を始めた。山陰随一の商都では、夏の書き入れ時への影響を懸念する声と、これ以上の拡大を防ぐためにはやむを得ないと同調する声が交錯した。  (岩垣梨花)

 ネオンが光り、店が軒を連ねる米子市の角盤町かいわい。居酒屋「酒菜 桔梗屋」を営む店主の細木晋治さん(52)は時短要請検討の一報を聞き「やっとお客さんが戻ってきたばかりなのに」と、肩を落とした。

 山陰両県や首都圏で居酒屋チェーン「炉端かば」を展開し、米子市内で3店舗を構えるかばはうすホールディングスも、コロナ禍前の6割程度の売り上げとなり、回復の兆しを感じ始めていた。

 それだけに、永田光本部長(47)は、地元エリアで時短要請を受ける可能性がある事態に驚き「デリバリーやテークアウト事業で対応するしかない」と話した。

 例年なら米子市内は7月下旬から8月にかけて祭りなどのイベントでにぎやかになる。だが、可能な限り自粛を求める流れで、31日に皆生海浜公園(米子市皆生温泉4丁目)で予定された恒例の地ビールフェスタも中止が決まった。主催する角盤町商店街振興組合の森紳二郎代表理事(57)は「残念だが安全を守るためには仕方ない」とした。

 今、感染拡大が止まらず事態が長引けば、深刻化することは首都圏や関西圏の先例から明らかだ。このため、平井知事が打ち出した局面打開策に理解を示す声も相次いだ。

 居酒屋「厨」(米子市尾高町)を経営する門脇重道店長(50)は、市内で感染が急拡大した14日ごろから、宴会や週末の予約キャンセルの電話が相次いだと打ち明けた。「感染者が増えればお客さんが過敏になるのも仕方がない」と話し、「協力金があれば時短要請に応じやすい」と制度設計をきちんとするよう注文した。