青空が広がる穏やかな正月だった。昼食は、幕の内弁当とすまし汁を入所者と楽しんだ。石川県輪島市門前町にある知的障害者の自立支援施設「ふれあい工房あぎし」。副施設長の今村貴子(59)は日が傾き始めた頃、同僚の職員3人と共に入所者38人の入浴の準備に取りかかろうとしていた。

 

津波の恐怖

 だが平穏は突然打ち破られる。1月1日午後4時過ぎ、震度7の激しい揺れに襲われた。「押しつぶされる」。今村は死を覚悟し、机にしがみついた。2階建ての施設は一部損傷に...