資金交付制度のポイント
資金交付制度のポイント

 地方銀行や信用金庫といった地域金融機関が経営統合や合併に踏み切る際、必要な費用を国が一部負担する「資金交付制度」の創設を盛り込んだ改正金融機能強化法が21日、施行された。新型コロナウイルス感染拡大で打撃を受けた地域経済を支えるため、地銀などに再編で経営基盤を強化するよう促す。

 再編で重複店舗の閉鎖などによる経費削減効果は見込めるが、本業の収益力向上に直結するわけではない。経営基盤を強化した地銀などが地域経済を活性化させ、自らの収益拡大につなげられるかどうかが課題となる。

 資金交付制度は、再編に必要な費用全体の3分の1を30億円を上限に支給する仕組みだ。21日以降の再編が対象で、申請期限は2026年3月末とする。期限を設けて地銀などの背中を押す。

 交付の対象として認められるのは、システム統合や店舗の看板変更に伴う費用のほか、新たなホームページの作成費用などだ。再編する金融機関は金融庁の認定を受けた上で預金保険機構から資金交付を受ける。再編が実現しなければ金融庁が資金の返還を求める。

 この制度の活用を検討する地銀もある。岩手県に地盤のある東北銀行(盛岡市)の村上尚登頭取は、山形県と秋田県を地盤とする地銀を傘下に持つフィデアホールディングス(仙台市)への合流を発表した2日の記者会見で、制度活用を「当然検討する」と述べた。

 10月から同一グループとなる福井銀行(福井市)と福邦銀行(同)も検討。統合協議に入った青森銀行(青森市)とみちのく銀行(同)も申請を視野に入れる。

 SBI証券の鮫島豊喜シニアアナリストは「資金交付は再編を後押ししても、銀行の収益力を高めてくれるわけではない」と指摘。「地銀は(取引先の成長性を分析する)事業性評価により、融資先の経営を上向かせる努力をさらに続けていくべきだ」としている。