「中身が水で良かったが、もしガソリンだったら大変なことになっていた」―。松江市で開催された本社主催の島根政経懇話会で講師を務めた金高雅仁・元警察庁長官は、こう振り返った。今月4日、水戸市で聖火ランナーに対し、沿道にいた女が水鉄砲を発射して逮捕された事件。その時、女が口にしたのが「トーチの火を消せ。オリンピック反対」▼コロナ下で、きょう競技が始まる東京五輪は大半が無観客など異例ずくめ。「普通なら五輪は国民的歓迎を受けるが、今回は世論が割れている。その亀裂に単独テロが発生する可能性を排除できない」と金高氏▼そう言われると、今回の水鉄砲事件をあっさり水に流す気になれない。背景は不明だが、どこか予兆めいて不気味さも付きまとう▼五輪の宣伝効果に便乗した組織的テロには厳重な警戒の目を光らせているが、「ローンウルフ(一匹狼(おおかみ))」と呼ばれる単独テロはつかみどころがない。開催ありきで突き進んできた大会の在り方に、いつどこで不満が爆発するか。開会式を目前にこんなことを考えるのは気が重い▼水鉄砲を向けられたのは、かつての陸上男子100メートルの日本記録保持者で前回の東京五輪など2度の出場経験がある飯島秀雄氏(77)。往年の花形選手を狙ったのか、それとも偶然だったのか。感染拡大リスクと世論分断による挟み撃ち。祝祭より無病息災を祈る機会になるとは。(前)