「取材に出るなと連絡がありました」。12日朝、滝のような雨が降る中、代休を返上して雲南支局に駆け付けると、電話を手にした同僚が叫んだ。「すぐに行け」はあっても、「行くな」は初めての経験だった▼雨脚が遠のいた正午すぎ、状況把握のため外へ出た。国道54号を雲南市掛合町へ進むと、対向車が水しぶきを上げ向かってきた。目の前に道は見えず、湖が広がっているようだった。携帯電話に届いた「緊急安全確保」の深刻さに背筋が凍った▼通行止めが一部解除され、訪れた同市三刀屋町飯石地区の交流センターでは、地域自主組織のメンバーが給水作業を行っていた。地区は一時孤立。実効性の高い避難計画を策定していたのに加え、前日に避難用具の点検をしていたことや職員が出勤していたことが幸いし、迅速な対応ができたという▼誰もが口にした言葉は「奇跡」。道路はえぐれて陥没し、土砂で埋もれた箇所が多数あったものの、人的被害はゼロ。疲労の中に安堵(あんど)がにじんだ▼交流センターでは、避難した住民たちが協力して食事や寝床を準備した。地域と行政の協働を目指す地域自主組織の、まさにあるべき姿だろう。一方で、少子高齢化が進展し、住民を主体とした活動がいつまで続けられるかは分からない。豪雨からの復興だけでなく、人とのつながりを大切にし、安心して住み続けられる地域づくりの重要性を痛感した。(目)