同じお弁当でも、外で食べるとおいしく感じるのはなぜか。人は普段とは違う環境に身を置くことで五感が刺激され、自律神経が整い、幸福感を得られるからだという。これを「転地効果」というそうだ。
その効果もあっただろう。秋晴れの下、とても爽やかな演奏を聴いた。「文化の日」の3日、出雲大社に参拝すると、正門の勢溜(せいだまり)にカラフルなユニホーム姿で楽器を持った大勢の高校生。神在月(かみありづき)のもてなしとして奉納演奏と共に下り参道を約160メートル、マーチングパレードをするという。
参加校は松江商、出雲商、出雲北陵、出雲、大社と特別ゲストの京都橘の計370人。参道の松や椎(しい)の木々や葉が、生徒が奏でるはつらつとした音色と軽快な動きに呼応するのか、境内の神聖な空気も相まって、すがすがしい時間と空間をつくり出していた。その中で練習を重ねたであろう生徒たちのパフォーマンスは、よりまぶしく見えた。
全国トップクラスの京都橘のマーチングはさすがの一言だったが、「吹奏楽王国」の島根勢も引けを取らない。17日に大阪市で開かれる全日本マーチングコンテストには、中国地方代表4校のうち出雲北陵、松江商、出雲商が出場する。
そんな全国レベルのマーチングを楽しめたのも、ちょっと外へ出たおかげ。いつもと違う道を歩くだけでも、色づく景色に手軽に転地効果を得られそうだ。思わぬ幸せに会える季節としたい。(衣)