足をふらつかせ、たどり着いた競技場で何度も転んだ。ゴールが近くて遠い。スタンドから湧き上がる悲鳴と声援。意識朦朧(もうろう)の中で笑みを浮かべ、走り切った姿が印象に残っている。
2008年の大阪国際女子マラソンに初マラソンで挑んだ福士加代子さんだった。どんな時も笑顔を絶やさなかった彼女は22年に現役を引退後、走ることの楽しさを伝える活動を展開。高松市で「笑福(わらふく)駅伝」と名付けたイベントを主宰していると知った。子どもからお年寄りまで、その名の通り「笑って走れば福来たる」駅伝だという。
師走の当地でもたくさんの走る笑顔が見られそうだ。きょうは国宝松江城マラソンが、来週8日は石見路のしおかぜ駅伝が開催される。両方に出場する強者ランナーもおられよう。
しおかぜ駅伝は久しぶりに復活参加するチームがあり、メンバーが若返りしたという声も多く寄せられているから楽しみだ。地域の大人たちに交じって中学・高校生が出場し、陸上部以外からの参加も珍しくないのが大会の特徴であり、魅力でもある。
初出場の選手もいるだろう。本番を1週間後に控え、緊張や不安を感じているかもしれない。息が上がり、足が重くなっても沿道の声援が背中を押してくれる。その先に仲間が待っている。「走るってつらいだけじゃない、楽しい!」。たすきを渡し終えた時には、福士さんの言葉と笑顔の意味がきっと分かる。(史)