新型コロナウイルスの新規感染者が東京都で2848人、沖縄県で354人といずれも過去最多を更新した。2都県には緊急事態宣言が出ているが、特に東京は発令2週間で状況悪化が著しい。

 東京は五輪が開幕してまだ5日目。このまま感染の拡大が続けば、医療提供体制が逼迫(ひっぱく)し、ワクチン接種要員の確保や、五輪選手団らのケアにも影響が出て運営の基盤が揺らぎかねない。事態は深刻と言うべきだ。

 菅義偉首相は「感染対策の決め手」と公言するワクチン接種を最優先してきた。しかしワクチン接種が最も先行している欧米諸国も、インド由来のデルタ株まん延を原因として感染の再拡大に見舞われている。ワクチンは感染、重症化の防止に大きな効果はあるが、ワクチン頼みの対策では今の危機的状況を止めることはできない。政府は方針を見直し、感染症対策の原点に戻るべきだ。

 首相は宣言発令に際し「東京を起点とする感染拡大は絶対に避けなければならない。先手先手で予防的措置を講ずる」と強調したが、現時点では果たせなかったと言わざるを得ない。発令2週間後には宣言の効果により感染者は減少傾向になる前例が多い。今回逆ベクトルになってしまったのは、五輪効果もあって人流を抑え切れなかったことが大きい。

 昨年3月の日曜日平均の人出と、1~4回目の緊急事態宣言開始から約2週間後の日曜日の人出をそれぞれ比較した民間調査では、宣言は回を重ねるごとに人出を抑制する効果が薄まっている。東京駅では宣言1回目の昨年4月は65%減少したが、4回目の今月25日には10%減にとどまった。

 政府は飲食店の酒類提供を停止したが、協力金支給が遅れるなどしたため事業者は要請に従わず、営業を続ける例も多くなった。長引くコロナ禍で営業、雇用を継続できるか死活問題になっている。こうした例が積み重なって感染拡大を招いたと見るべきだ。

 一方、首相は「ワクチン接種が大きく進み、コロナとの闘いにも区切りが見えてきた」との認識を表明。その上で、7月末にはワクチンを少なくとも1回接種した人が全人口の4割に達し感染者が減少傾向になるとの見通しを示した。これは楽観的すぎる見方だろう。

 予防効果が最大化する2回接種を完了した人は英国で全人口の5割超、米国は5割弱だ。それでも両国ともデルタ株による感染再拡大に見舞われ、英国は日本の約半分の人口にもかかわらず最近まで新規感染者5万人前後の日が続いた。東京についても専門家は8月初めまで感染者増が続く可能性を指摘する。

 2回接種完了が全人口の2割強という日本の現状では、ワクチン頼みは極めて危うい。東京の新規感染者は、高齢者へのワクチン普及により20代を筆頭にほとんどが50代以下の世代になった。それでも入院患者、重症者は増え続けている。都は病床の安定確保を急いでほしい。

 既に夏休みシーズンに入り、お盆の帰省や国内旅行を計画する家庭も多いだろう。そこに57年ぶりの五輪開催という大イベントが重なる。その中だからこそ、不要不急の外出、家族以外での会食を我慢し、3密を回避しつつ五輪もテレビ観戦に徹したい。政府は営業を制限する事業者への支援強化をまず急ぐべきだ。