中国電力島根原発2号機が再稼働した7日、一本の映画を見た。2011年に起きた東日本大震災と東京電力福島第1原発事故で被災した福島の人たちを追ったドキュメンタリー『生きて、生きて、生きろ。』。津波で夫が行方不明の女性、避難中に中学生の息子が命を絶って睡眠薬と酒に頼る男性、避難生活が長引く中で妻が認知症になった夫婦…。
今、時間を経て発症する遅発性の心的外傷後ストレス障害(PTSD)など心の病が目立つという。そんな福島の真実は、インフラ再整備といった外形的なニュースに触れることで見えなくなっているのではないか。
作中の人たちは「頑張れ福島」という空気の中で本心を吐き出せず、心を病むことを恥だと思って生きていた。孤独に苦しむ姿は、国策民営で進めた原発の事故に起因するにもかかわらず、その苦難を個人の問題として切り捨てる国や企業の実態を浮き彫りにしているようにも見えた。
そんな人たちの声に耳を傾ける医師、拒まれながら自宅を訪問し距離を縮める看護師。その優しさに触れた人たちの変化を丹念に切り取った島田陽磨監督。誰もが実名、顔出しで登場していた。
上映後のトークショーで島田監督は「これからもなかったことにされている人たちに目を向けた作品を撮りたい」と話した。重たいテーマではあったが、生きること、生かされている人間の強さに光を見た一本だった。(衣)