ライトアップされた東京タワー。その美しさに思わず撮影した
ライトアップされた東京タワー。その美しさに思わず撮影した

 起業家の表彰式を取材した12月上旬の夜。会場だった東京・芝公園のホテルを後にすると、ライトアップされた東京タワーが目に飛び込んだ。温かみのあるオレンジ色に浮かぶ東京のシンボルの美しさに思わず携帯のシャッターを切った。

 クリスマスを迎え、都心はどこに行ってもイルミネーションで彩られ、華やかだ。東京タワーも23~25日はプロ野球巨人の球団創設90周年記念したオレンジカラーとクリスマスカラーが交互に輝く。

 そんなクリスマスの東京がもし停電になったとしたらどうなるか-。イブの東京を舞台に、停電の夜に交錯する人間模様を描いた群像劇が、2005年公開の映画『大停電の夜に』だ。

 物語は、さまざまな事情を抱える人々が暗闇の中で普段目を背けていた感情に向き合い、胸の奥にしまい込んであったほろ苦い記憶を語り始める。不便さを感じる環境だからこそ向き合わざるを得ず、気付くことができるというメッセージも伝わる。映画を彩るろうそくの明かりも温かく、たまには電気のない世界もいいのではとの幻想を抱かせてくれる。

 中国電力がおととい、島根原発2号機(松江市鹿島町片句)の発送電を始め、約13年ぶりに一般家庭や企業に原子力の電気を届けた。政府が示した次期エネルギー基本計画の原案は、原発と再生可能エネルギーを最大限活用していくと明記した。電気について考えさせられる冬である。(吏)