女子フェザー級決勝 フィリピン選手を破って優勝し喜ぶ入江聖奈=両国国技館
女子フェザー級決勝 フィリピン選手を破って優勝し喜ぶ入江聖奈=両国国技館
高校時代、全国大会で入江(右)とともに優勝した木下鈴花さん=2017年12月、米子市内
高校時代、全国大会で入江(右)とともに優勝した木下鈴花さん=2017年12月、米子市内
女子フェザー級決勝 フィリピン選手を破って優勝し喜ぶ入江聖奈=両国国技館 高校時代、全国大会で入江(右)とともに優勝した木下鈴花さん=2017年12月、米子市内

 日本女子ボクシング界で前人未到の頂に立った入江聖奈(20)の競技人生は周囲の支えとライバルとの競い合いで磨かれた。所属する日体大ボクシング部には、金メダル獲得を自分のこととして喜ぶ同志がいた。同じ米子市出身の木下鈴花さん(20)。共に大学で競技をやめることを決め、五輪を目指した仲だった。道を極めた友の顔はいつにも増してまぶしかった。

 フライ級選手の木下さんは入江より6年遅く、中学2年で競技を始めた。幼少期から家族ぐるみで付き合いがあった入江にジムに行こうと誘われた。気さくな一方、真剣な表情で練習に打ち込む姿に憧れ、同じシュガーナックルボクシングジム(米子市久米町)に通い始めた。

 学校帰りに、2人はほぼ毎日一緒に3~4時間の練習に励んだ。大会前の減量では1日に500ミリリットルのペットボトル1本分の水を飲みきらないほどの苦しみを味わったが「おおらかで優しく『天然』が入っていて面白い」(木下さん)入江と、愚痴や不満、減量後に何が食べたいかを言い合って乗り越えた。

 「東京五輪で金メダルを取る」と宣言していた入江に触発され、高校時代に自身も同じ目標を立てた。

 競技を続けるのは大学までとも決めた。「圧倒的な強さを身に付けて、せな(入江)に追い付く」と木下さんが言えば、入江は「りん(木下さん)に負けたらボクシングをやめる」と、互いの体を突き動かした。

 ともに日体大進学後、入江は国際大会でさらに頭角を表し、昨年3月の東京五輪アジア・オセアニア予選で見事代表入りを決めた。木下さんは五輪予選の出場権につながる全日本女子選手権で敗れ、代表入りはかなわず、ここで明暗が分かれた。

 親友の勇姿は、都内の1人暮らしの部屋で観戦。無料通信アプリのLINEでは余計な重圧をかけないよう、普段通りの会話を心がけた。

 3日の決勝だけはボクシング部の仲間と練習場で観戦した。手の内を知り合っているネスティー・ペテシオ(フィリピン)との激しいファイトは、判定が出るまで「心臓がばくばくだった」。呼ばれたのは入江側の「ブルー」。「努力が報われた」と安堵(あんど)した。

 約束通り、入江は試合後の会見で競技は大学卒業までと公言した。2人に残された競技人生は2年足らずとなる。また国内大会で優勝すれば、入江とともに国際大会に出場できるチャンスがある。

 「残された時間で全てを出し切って、一緒に日の丸を背負いたい」(木幡晋介)