酷暑下では車周辺の温度が平熱を超えることも少なくない
酷暑下では車周辺の温度が平熱を超えることも少なくない

 酷暑の中、車内に残された子どもが熱中症で亡くなったり、車のトラブルに巻き込まれたりする事故が後を絶たない。対策を啓発している小児科医は「短時間でも、冷房をつけていても、子どもを車に残すことは命にかかわるリスクがあることを知ってほしい」と注意喚起する。

 子どもは大人に比べて体温が上がりやすく、脱水にもなりやすい。猛暑下の車内温度はすぐに上昇する。

 JAF(日本自動車連盟)によると、2020年8月の1カ月間に「子どもを車内に残したままのキー閉じ込み」で出動した件数は、全国で75件あった(山陰両県はゼロ)。

 JAFの検証では、外気温35度の炎天下に駐車して窓を閉め切った状態で、エンジン停止後15分で暑さ指数が人体に危険なレベルに達し、3時間後には車内温度が55度を超えた。

 子どもの健康について保護者の悩みに答えるスマートフォンアプリ「教えて!ドクター」のプロジェクト責任者を務める坂本昌彦医師(44)=長野県・佐久総合病院佐久医療センター小児科医長=は「ちょっとぐらいとか、せっかく寝ているのに起こしたくないという気持ちもわかるが、命のリスクを冒してまで(車の外へ)行かなくてはいけない用事なのか考えてほしい」と話す。

 例えば買い物。「子どもを預ける」「複数の大人で行く」「宅配サービスを利用する」といった、危険を避ける工夫はできる。やむを得ずに子連れで行く場合は、子どもが眠りにくく機嫌のよい朝早い時間に済ませるといった対策を考える必要がある。

 加えて坂本医師は「意図しない車内閉じ込め」にも注意が必要だとする。

 19年には、大人が知らない間に、子どもが自宅敷地内に止めていた車に入り込んで出られなくなった事故や、20年は子どもを乗せていること自体を忘れて長時間放置してしまったケースがあり、いずれも亡くなった。

 坂本医師は「気をつけていたとしても、子どもが車内に閉じ込められる危険性はある。自宅であっても止めた車には必ずロックをする、停車後は後部座席を確認するくせを付けるなど、家族全員で(リスクを)共有し、予防できる事故を防いでほしい」と訴える。 (増田枝里子)