定年後を見据えた人生設計について話す楠木新さん∥松江市朝日町、松江エクセルホテル東急
定年後を見据えた人生設計について話す楠木新さん∥松江市朝日町、松江エクセルホテル東急

 山陰中央新報社の島根政経懇話会、米子境港政経クラブの定例会が11、12日の両日、松江、米子両市であった。作家楠木新氏(71)が「定年後を見据えた働き方改革」と題して講演した。要旨は次の通り。

 60歳から74歳までの15年間は「黄金の15年」。現役時代ほど仕事が忙しくなく、充実して過ごせる人生で最も楽しめる期間だという。黄金の15年を有意義に過ごすためには「もう一人の自分を持つこと」「自分なりの居場所を持つこと」が大切だ。

 60代以降、加齢に伴って活力は低下してくるが、70代半ばまでは男女ともに自分で好きな所に行き、やりたいことができる人が多い。

 60歳で会社を辞めると、1日約11時間ほどの自由時間が生まれる。これを74歳まで15年間続けると、6万時間の自由時間が生まれる。21歳から60歳まで40年間働いた総労働時間は8万時間で、これほどの裁量のある時間を持つことになる。この黄金の15年をどう活用するかが重要だが、仕事一筋で過ごしてきた人ほど、定年後に「何をしていいかわからない」と立ち往生することが多い。

 定年後も社会とのつながりを維持し、生活を充実させていくためには、会社員のうちから「もう一人の自分」をつくることを勧める。仕事と別の活動を両立することで相乗効果が生まれ、会社員としての仕事の調子も良くなる。

 居場所のつくり方では、ネイルアートやキッチンカーなど小規模なビジネスを始めたり、NPO法人や大学など、まったく異なる組織で働くことで、新たな経験が得られることがある。ゴルフや釣りといった気分転換の趣味ではなく、一生続けられる趣味として外国人の子どもに日本語を教えるボランティアなどもある。

 人生は後半戦が勝負。主体性を持ち自分から行動することで、黄金の15年を輝かせられる。(井上雅子)