浜田市議会で論じられている石見神楽伝承施設・郷土資料館の整備問題。候補地として示されたJR浜田駅前の酒造会社跡地に整備することの是非がクローズアップされるのは仕方ないにしても、石見神楽だけにとどまらない浜田の歴史的遺産をどう後世に継いでいくかという肝心要の議論が一向に進まない。
浜田高校のそばにある狭い現資料館を訪れたことがある人ならば、ハードだけでなく運営体制の充実も含め「どがあにかせんと」と思うのが普通だろう。
それが場所云々(うんぬん)でもめ、また先送りに。首長だけでなく、議会の見識を疑わざるを得ない。議員ではない。議会全体のそれだ。出てきた執行部案に物言うのも仕事の一つではある。だが理にかなっていないなら、施設の要不要も含め対案が必要ではないか。
神楽文化の伝承について方向性を示した昨年11月の有識者委員会の提言は、浜田を「石見神楽を創り出したまち」と捉え、生きた文化財である各神楽社中の拠点や道具の生産現場へと関心をいざなう情報発信拠点の必要性を説いた。簡素だが、納得できる結論だ。
この提言の具現化は、一義的に予算編成権を持つ執行部の課題だろう。だが、事がここに至っては議会の責任でもある。現議員21人の中には文化振興に詳しい人材も少なくないとみる。問題を事実上放っておいては、議会の判断で必要に応じて会議を開く「通年会期」の名が泣く。(万)