―大学の運営方針として「地域とともに 学生とともに」というスローガンを掲げています。
公立大学の最大の強みは地域との密接な関係性です。安来、大田、浜田、津和野各市町に設置したサテライトキャンパスを拠点に、自治体や島根県内企業、住民と連携しながら地域の課題解決に取り組み、地域の発展を支えていきます。また、近年はフィリピン、タイ、中国・寧夏回族自治区の大学と留学や研究の促進に向けて連携協定を交わしました。学生が地域貢献や国際交流ができる環境づくりに努めています。

―学外活動が盛んですね。
2024年からは出雲市内の酒造会社「台雲酒造」と共同で、酒かすを使った美容液「台雲美(たいうんび)」を作って販売し、売り上げの一部を学生の留学資金の支援に活用しています。さらに萩・石見空港の活用策で、車椅子利用者や高齢者を対象にしたバリアフリーの旅行商品も開発中です。24年10月には、実際に旅行客を招いて実証実験を行いました。

―島根県内の高校からの入学者を増やす取り組みを一貫して進めています。
人口統計より、35年ごろから全国的に大学進学者数が大きく落ち込むとみています。高校生が都市部の大学を受験する傾向もあり、この10年間の取り組みが鍵だと言えます。県内の高校出身者は大学卒業後も県内企業に就職し、定着しやすいのが特徴です。26年度入試からは、県内高校を対象に、看護栄養学部看護学科で最大4人の指定校推薦枠を導入します。今後も、県内枠の拡充に努めます。

―就職も手厚く支援しています。
県内企業からご寄付を頂き、県内就職を希望する学生に年25万円を支給する「しまねの未来を担う人財奨学金」や、企業や市役所など計10カ所で長期実践型キャリア教育(長期就業体験)を実施しています。県外出身の学生も県内企業を知る機会となり、県内就職につながっています。今後は伸びしろが大きいIT業界にも着目し、就業体験や就職に向けて連携したいと考えています。


未来を創るのは、皆さんの挑戦と行動です。学びを深め、地域や世界とつながりながら、自分らしい道を切り拓いてください。変化の時代こそ、新しい価値を生み出すチャンスです。そして、島根県立大学では、皆さんの野望を夢で終わらせず、人間味のある温かな人を育成したいと思っております。

山下一也:岡山県
経歴:医学博士、専門分野は神経内科、神経心理学。島根医科大学医学部卒業後、1991年にカリフォルニア大学デービス校神経科研究員として留学。1994年から津和野共存病院院長、その後、島根県立大学出雲キャンパス副学長などを経て、2023年4月から島根県立大学理事長・学長。
趣味:ネットサーフィン。