石破茂首相が看板政策「地方創生2・0」を語る際、念仏のように唱える言葉がある。「若者や女性に選ばれる地方をつくる」-。就任半年を迎えた今月1日の記者会見でもあえて「もう一度申し上げる」と述べ、繰り返した。
その前日に政府は、地方から都市部に若い女性が集中する問題に関する会合を官邸で開いた。なぜ地方を離れたのかを当事者から聞き取り、交流サイト(SNS)で発信している「地方女子プロジェクト」のメンバーらが首相と意見交換。都会で暮らす地方出身の20~30代女性が話す本音が印象に残った。
「地元に戻る選択肢はない。結婚する気はないが、1人で生計を立てられる仕事がない」「地方での結婚や出産の圧力にはうんざり。(国や自治体は)女性の意志や選択に向き合うことなく、子育てや婚活の支援が中心なのは逆効果だ」…。予定を20分超えて1時間、率直な声を首相にぶつけた。
ある50代女性は「私たちが若い頃に感じていたジレンマを、いまだに20~30代の女性が抱えている」と吐露。聞いていた女性の中には涙を流す人もいた。
地方女子プロジェクトの山本蓮代表は、若い女性の流出は「地方格差と男女格差が重なる複雑な問題だ」と語る。全ての女性が地方に子育て環境の良さだけを求めているわけではない。さまざまな女性や若者の本音を聞いて施策に生かさなければ「選ばれる地方」にはなり得ない。(吏)