マスターズゴルフに備え、調整する松山英樹選手(右)=8日、オーガスタ・ナショナルGC(共同)
マスターズゴルフに備え、調整する松山英樹選手(右)=8日、オーガスタ・ナショナルGC(共同)

 きょう開幕するゴルフの祭典マスターズ・トーナメントは風との戦いだ。舞台の米オーガスタ・ナショナルGCは丘陵地に造られ、不規則な風が名手を悩ます。名物は、神に祈りたくなる難易度の「アーメンコーナー」で知られる11番からの3ホール。距離の短い12番は、超一流をして「ラウンドすればするほど分からない」と言わしめるほどだ。

 こちらの風も相当に読みにくい。世界経済と金融・株式市場である。トランプ米政権の関税ショックで世界同時株安の局面に入った。

 ノーベル経済学賞を受賞した経済学者ポール・クルーグマン氏ら多くの識者が非難するが、貿易を富を奪い合うゼロサムゲームと捉えるトランプ大統領は「時に何かを治すために『薬』を飲まなければならない」と意に介さない。

 石破茂首相は相互関税を巡る米側との交渉役に赤沢亮正経済再生担当相を起用した。自由貿易体制が維持できるか否かの重責を腹心に託す。商品券問題とは異なり、国民生活に直結する難題。ただでさえ不安定な政権が対応を誤れば参院選は乗りきれない。

 ゴルフを愛するトランプ氏がマスターズを観戦し、オーガスタの風のように心変わりする近未来を願うが、かねて「関税は最も美しい言葉」と豪語しており、そう簡単には翻意しないだろう。米国の有権者でないわれわれは赤沢氏に期待し「アーメン」と成り行きを見守るしかないのが歯がゆい。(玉)