田中美佐子さんの出演を紹介する「こころ旅」のホームページ
田中美佐子さんの出演を紹介する「こころ旅」のホームページ

 94歳で先月亡くなった映画監督の篠田正浩さんの作品『鑓(やり)の権三』(1986年公開)について、同僚がおとといの小欄で触れていた。タイトルは覚えていたが鑑賞しておらず、江戸時代の松江藩が舞台だったことは、恥ずかしながら初めて知った。

 調べると、主人公の権三を演じたのが郷ひろみさん。夫婦になる約束を交わしながら裏切られた女性役を島根県西ノ島町出身の田中美佐子さんが、その兄役を火野正平さんが担っていた。それを知り「なるほど、そういう関係だったのか」と納得した。

 火野さんといえば、近年は俳優業よりNHKBSの番組『にっぽん縦断 こころ旅』の旅人として有名だった。視聴者から手紙で寄せられた全国の「こころの風景」を自転車で訪ねる人気企画で、地元の人たちとの触れ合いも見どころ。山陰両県も何度か訪れており、実際に出会った人もいるだろう。

 2011年の番組開始時から旅人を務めていた火野さんが昨年11月に75歳で亡くなった。番組の今後を気にしていたが、25年春の旅は田中さんが引き継ぐことになった。『鑓の権三』の兄から妹へ“自転車旅”のバトンが渡った格好だ。

 「正平さんが喜んでくれる、空から笑ってみてくれる番組になれるように頑張ります」と自身のインスタグラムにつづった田中さんの旅が始まった。今回は山陰はルート外だが、いずれ古里・隠岐を走る機会があるのだろうか。(健)