ぽつぽつとした突起のある白い紙に藤野高明(86)が、そっと顔を近づける。上唇をはわせ、顔を動かしながら、そこにある点字を読んでいく。「点字は、暗闇の中にいた私に光を与え、人生を導いてくれた」

 不発弾の爆発事故のため7歳で視力を失い、同時に両手首から先がなくなった。指で点字に触れられず、文章は人に読み上げてもらうしかなかった。人生を諦めかけていた19歳の時、唇で点字を読めるようになった。人生が色づき始め「明日、何かが起きるかもしれない」と思えた。

 

いのちの...