「インバウンド」と呼ばれる訪日客の宿泊、飲食、買い物などの消費は統計上「輸出」に分類されるという。2024年は訪日客数が過去最多を更新し、その額も初めて8兆円を突破。今や自動車に次ぐ規模の外貨獲得手段になった。
米子-ソウル間の国際定期航空便の増便、来月下旬に控える台湾便の就航、境港のクルーズ船の動きの活発化という追い風も吹く中、消費地として米子市は、もっと恩恵があっていい。ただ、現実は皆生温泉頼み。インバウンドの受け入れを含む観光政策が見えない。中心市街地でよく聞く声だ。
市中心部にかつてのにぎわいはない。「商都」の看板を掲げ続けるなら、インバウンド消費という「輸出産業」で潤う、新しい商都の形をつくるときでは-。そんなことを考えながら迎えた3候補による先の市長選。「市役所の借地問題」という積年の課題を巡る舌戦に、商都の将来の姿は埋もれた。
「命を懸ける」。3選を果たした伊木隆司市長は、何度も決意を示した。2期8年を振り返り「これ以上できないぐらい精いっぱいやってきた」とも。覚悟と自負、時間をかけても一つ一つ積み上げる政治手法に、一定の評価を示す選挙結果だった。
決死の思いで臨む3期目。個々の公約実現はもちろん、その先で輪郭を描く街の姿があるとすれば、市民と共有できるのか。乏しいといわれる「伊木カラー」は次の4年間で決まる。(吉)