休日に足を延ばした山口県宇部市で、ふらり立ち寄った写真展は一風変わっていた。「ここに捨てないでください」と書かれた立て看板の下に山積みされたごみ、不法投棄された原付バイク、生ごみを荒らすカラス、早朝の塵芥(じんかい)車…と、そのどれもが身近にあるごみの風景。
地元の環境コンサルティング会社が企画し、10年かけて国内外で撮りためた写真という。廃材などを使ったアート作品は、ともすれば汚れた現実から目を背けることになりかねない。その点、飾らないありのままのごみたちはストレートに訴えかけてくる。
テレビドラマの名作『北の国から』を手がけた脚本家の倉本聰さんのメッセージを思い出す。2年前、札幌市で開かれた先進7カ国(G7)気候・エネルギー・環境相会合に合わせた環境イベントの会場で、廃棄された衣類や携帯電話、スクラップなどを展示した。
<これらは文明が生み出した排泄(はいせつ)物であり、環境を毒する遺体である。だがこの遺体から皆目をそむけ、それを悼むものも、涙するものもいない>。ごみを弔う葬式のような空間の仕掛けで、「文明の墓場」と名付けた。
ゴールデンウイークに買い物を予定している方は多かろう。宇部市の写真展のあいさつ文には「廃棄物は単なるゴミではなく、私たちの消費行動や社会の在り方を映し出す鏡です」とあった。じっくり考えてみたい。あすからの5月は消費者月間。(史)