夫を自宅で介護する女性(左)を訪問する民生委員の男性=2022年、川崎市
夫を自宅で介護する女性(左)を訪問する民生委員の男性=2022年、川崎市

 5月12日は「民生委員・児童委員の日」。民生委員さんには高齢の身内も時々声をかけてもらっているが、その活動や苦労については知らない部分が多いので、お礼も言えず申し訳ない気持ちになる。

 民生児童委員は非常勤の地方公務員で無報酬のボランティア。島根県協議会の住田達宣会長(72)=川本町在住=は、「福祉に関する困りごとや悩みを聞いたり、学校と連携して子どもを見守ったりしながら担当地区を歩いています」と言う。

 住田さんが受けた相談は多岐にわたる。ある時、独居の高齢者が遠い病院にかかった。治療を終え病院は帰ってくれというが、三江線の最終は出た後。「帰れずにいる」と県外に住む高齢者の親族から午前1時半に電話を受けた。頭に浮かんだのは「よくぞ私に連絡してくれた」。

 このケースは福祉というより医療や交通の問題に思えるが、住田さんは自分の車で迎えに行った。「人の役に立つのが生きがい」と言うから頭が下がる。もちろん悩みもある。委員のなり手不足に加え、個人情報保護法ができて安否確認も難しくなった。社会を支える民生児童委員を、社会で支える仕組みが必要だろう。

 住田さんには別の顔がある。野球のベテラン審判。高校野球から学童、女子の試合にも駆け付ける。「人の世話をするのも人の世話になるのも、普通のことと思える地域になれば良いですね」。その願いが、原動力だ。(裕)