今から12年前、東京都狛江市の職員だった平林浩一さんはあるニュースに思いを巡らせていた。その内容は、知的障害や認知症がある人の選挙権に関するもの。それまで、財産管理や契約行為をする際に支援してくれる「成年後見人」を付けた人は、選挙権を失っていた。その権利が2013年5月、公職選挙法(公選法)の改正によって回復されたのだ。

 平林さんは考えた。「ただでさえ緊張する選挙という場面で、成年後見人を付けられた人はしっかり投票できるだろうか」。当時のポジションは、狛江市の福祉保健部長。障害がある人たちへの支援を考える司令塔に、半年ほど前から就いていた。

 回復した選挙権を一人一人がきちんと行使できるようにするため、行政として何ができるだろう。平林さんはすぐさま、知的障害がある子どもを育てる知人にメールを送った。全国で2番目に面積が小さい市で、「みんなに優しい投票」を目指す取...