日本を代表する絵本作家の荒井良二さんは、自らを「絵本もつくる人」と称する。立体や空間作品を制作するほか、イラストレーター、芸術監督、バンド活動まで活躍のジャンルは多岐にわたる。その理由について「絵本の王道じゃなくて、絵本の周辺にいたい。そうじゃないと絵本が見えなくなってしまうから」と語る記事を読んだことがある。
この人の言葉の真意はどこにあるのだろう。日本相撲協会を退職し「協会の中ではなく外から相撲を発展させたいと思った」と会見で説明した白鵬翔さん。モンゴル出身で、幕内優勝45回、横綱在位84場所と史上最多の記録が示す通り相撲の王道を歩んできた。
まさか協会のしがらみから、相撲が見えなくなったのではあるまい。現役時代は圧倒的な強さの半面、土俵内外での振る舞いに何度も物言いがついた人である。協会を離れた立場からわが身を顧みて気付くことも多々あろう。
会見では、相撲文化を国際的に広めていくための世界相撲グランドスラム構想や五輪競技採用を目指す考えを明らかにした。型破りで独創的な絵本作品を世に送り出している荒井さんは、ルールや固定観念から「作家が解放されていれば、それに呼応して何か感じてくれる人も多くなる」と語っていたが、どうなることか。
土俵で雄たけびを上げ、拳を突き上げる「SUMO」は、絵本の中のおとぎ話にしても読む気になれない。(史)