松江市出身で、2005年の「長者番付」で日本一になったことでも知られる伝説のファンドマネジャー・清原達郎さんの著書『わが投資術』は昨年、全国の書店に平積みされるベストセラーになった。
何百億円ものお金を動かした株の達人が生涯で得た知識を惜しげもなく記した本は多くの投資家に注目されたが、「株の秘伝書」としての読み方から離れても、心に残る記述があった。
それは小学生時代の体験談。教師から「尊敬する人」を聞かれ「父親です」と答えると、「歴史上の人物とか他にいないの」と言われ悔し涙が出たという。父親を本当に尊敬していた清原さん。「坂本龍馬を尊敬しているとか、一体何なんですかね。私には意味不明です」。会ったこともない「偉人」がなぜ正しい答えなのかと。
清原さんの投資スタイルは、一社一社丹念にリサーチし、自分の頭でちゃんと理解できない会社はどんなに話題になっても手を出さない、だった。子どもの頃に身に付けた現実主義。生き馬の目を抜く株の世界で、それは生き残る力となった。
父親は苦労人だったが、独学で英語を習得するような知識人で、2人の子どもを大学に入れるために節約に努め、子どもを一度も怒らなかったという。清原さんにとって父親の背中は、生涯の宝となったようだ。きょうは「父の日」。あなたには心の中にでも、感謝を伝えたい「背中」がありますか。(裕)