相談者は神奈川から島根に移住した未婚の女性。「周囲から『早く結婚して子どもを』と勧められることが苦痛。どうかわしたらいいのか」。回答は「私なら『そうですよねぇ、いろんな生き方がありますよねぇ』と同意しながら反対のことを言う。権力や立場がある人なら『今のはまずいですよ』と指摘するかな」。
先週、大田市であった講演会。ラジオパーソナリティーでコラムニストのジェーン・スーさん(52)が会場からの質問に笑いを交えて答えた。名前は芸名で日本人。飾らぬ話しぶりと絶妙な表現で支持を集め、寄せられる人生相談は月に千件以上。島根のような地方での講演にも力を入れているのは、まだ壁が取り払われていないと感じるからだという。
壁とは結婚して子どもを産み、仕事は控えるという、スーさんたち昭和を生きた女性が特に植え付けられた“絶対的な正解”の呪縛だ。
時は移り、正解のない多様な価値観の時代に必要なのは、意識のアップデート(更新)と自己受容。浮き沈みはあるけれど上出来だという自分を見つけて受け入れる。「人と比べ、まねをしても自分らしくいられる場所はつくれない」とスーさん。
自分と向き合うのは難しい。不都合な面を見たくない心理が働き、逃げている自分に気付くからだ。社会や誰かのせいにするのは簡単。でも、生きやすさへの一歩は自分の更新にあるのだとスーさんに教わった。(衣)