ビジネスの現場ではスピードが重視される。楽天グループのコンセプトは「スピード!!スピード!!スピード!!」。3回も繰り返して感嘆符を付けるほど譲れない一線なのだろう。仕事を進める際に前倒しは「善」で、先延ばしは「悪」とのイメージがすっかり定着した。
タイムパフォーマンス(時間効率)や働き方改革の名の下にやたらと礼賛される前倒しだが、社会心理学を専門とする大学准教授の安達未来さんはときに「悪い前倒し」があると説く。あまりに早く提出されたリポートは質がよくない傾向があり「さっさと終わらせた感」がひしひしと伝わることに着目し、研究を重ねた。
その理由は認知的負荷の軽減。人は多くのタスク(作業)を抱えたくないという負担から解放されたいがため、場合によっては質を度外視し、取りあえず済ませてしまうらしい。いわゆる「やっつけ仕事」だ。
ほとんどの学校であすから夏休みに入る。てこずる宿題の筆頭格は読書感想文か。前倒し派は早くやっつけたいと思うかもしれないが、ここはあえて時間を置くことを提案する。「適度な先延ばし」は予想外の発想を生み出すという研究がある。あるときは先延ばし、あるときは前倒しする「適時」のタスクマネジメントを意識したい。
さて本コラムは締め切り前日の深夜になり、ようやく書き始めた。適度な先延ばしだったかどうか、評価は皆さんにお任せする。(玉)