1963年8月、米ロサンゼルスの空港で熱狂的な歓迎を受ける坂本九さん(共同)
1963年8月、米ロサンゼルスの空港で熱狂的な歓迎を受ける坂本九さん(共同)

 日本が世界に誇る昭和の大ヒット曲『上を向いて歩こう』がお披露目されたのが、64年前のきょうのこと。元々は作曲家・中村八大さんが自身のリサイタルのために制作した楽曲だったが、歌唱は当時19歳の坂本九さんに白羽の矢が立った。

 ただ、坂本さんはリサイタルの2時間前に初めて譜面を渡され、ぶっつけ本番で初披露した、と作詞した永六輔さんが自著で振り返っている。それがよかったのだろうか。<うヘうぉ むふいてぇ あはぁ~る こぅうぉうぉうぉ…>。母親仕込みの小唄の節回しを生かした独特なアレンジが人々の心をつかんだ。

 日本だけではない。欧州で火が付き世界中でヒット。米国でも『SUKIYAKI(スキヤキ)』のタイトルで発売され、最も権威のあるヒットチャート誌『ビルボード』で3週連続1位を獲得した。前人未到の快挙だ。

 打って変わって今、“日本製”は前代未聞の逆風に見舞われている。日米関税交渉が続く中、トランプ米大統領が一方的に相互関税25%を通告。自身の思惑通りになっていない交渉を進めるためのアレンジかもしれないが、身勝手な脅しは到底受け入れられない。

 関税交渉の行方が見えない中、政権選択選挙と位置付けられた参院選が終わった。たとえ交渉がどんな結果に終わろうとも、そしてどんな政権の形になろうとも、しっかりと「前を向いて歩こう」と思える社会を築いてほしい。(健)