「真実はいつもひとつ」は鳥取県北栄町出身の漫画家・青山剛昌さんの『名探偵コナン』に登場する主人公の決めぜりふ。公開中の新作映画も前作に続き観客動員数1千万人を突破したという。
人気に水を差す気はないが、漫画家・田村由美さんの作品でドラマ化もされた『ミステリと言う勿(なか)れ』の主人公の学生は、「真実は一つ」と言い放つ刑事にこう反論する。「真実は一つじゃない。二つや三つでもない。人の数ほどあるんですよ」
例えば、自分はじゃれ合ったつもりで友人を押し倒しても、友人はいじめられたと受け止めるかもしれない。私情が交じる真実は捉え方によって異なる。
責任の取り方も一つではないようだ。参院選で自民、公明両党合わせて50議席以上という「必達目標」に届かず進退が注目された自民党総裁の石破茂首相が続投を表明した。日米関税交渉や物価高対策などの国難解消へ「比較第1党として責任を果たす」というのが首相の主張。ただ衆院選、東京都議選に続く大敗の責任を取り退陣を求める声もくすぶる。
責任を巡り米国のリンカーン元大統領はこんな格言を残している。「きょう責任から逃れることによって、あすの責任から逃れることはできない」。結局は責任から逃れられないという意味。続投を責任とするのなら、有権者から政権運営に「ノー」を突き付けられた真実を反省し、愚直に成果を残すしかない。(健)