先日、転勤先の東京都内で高校の同窓会に出席した。約100人が参加したその日はちょうど、夏の全国高校野球選手権島根大会で母校が初戦に臨んでいた。インターネット中継で途中経過が伝えられ、サヨナラ勝ちが決まると歓喜した。会場の一体感はさらに高まった。
約2週間がたったきのう、母校・松江南が島根大会の決勝戦に挑んだ。創部43年目。過去最高成績は1995年と2008年のベスト4で「準決勝の壁」を三度目の正直で越えた。勝負強さを発揮し1戦ごとに成長したチームの健闘をたたえたい。
23年前に高校3年生で島根大会に出場した当方は、1回戦で3点リードの九回2死走者なしから同点に追い付かれ、延長戦で敗れた。その前年も前々年も1点差の逆転負け。甲子園は憧れだったが、遠い存在でもあった。
壁を破って夢の舞台に最も近づいた後輩たちにはどんな景色が見えただろうか。強豪の開星に挑んだ決勝は2-26の史上最多得点差で負けた。
とはいえ、勝ち上がるたびに浮かれたOBたちの悲願は決勝進出から甲子園に変わった。島根県内で夏の甲子園に出場したことのない学校は、松江南を含め39校中21校に上る。悔しさを胸に刻んだ選手たちが一番よく分かっているかもしれないが、米大リーグ・大谷翔平選手の言葉を借りれば「憧れるのをやめましょう」。その言葉はこれから全国の強豪に挑む開星にも贈りたい。(吏)