夏は天地の精気が交わりすべての花が実を結ぶ。この季節はぐっすり眠って朝は早起きし、太陽の日差しを嫌わずに積極的に外に出て暑さを楽しむ-。
平安時代に朝廷に献上された医学書「医心方」にある夏の養生の心得。近年の酷暑に、もはや暑さは楽しむどころか恐れるものになった。
暑さばかりではない。「夏休みが怖い」という家庭も増えている。子どもの貧困対策に取り組む公益財団法人「あすのば」(東京)によると、給食がない夏休みに3食が食べられず痩せる子どもがいる。さらに心配なのは貧困が気力を奪っていること。支援する約6千人への調査で2割近い小中高校生が「消えてしまいたい」と答えたという。出雲市内のフードバンクが利用者に実施した調査でも、昨年の夏休みに3食が取れなかった子どもは20%、親は50%に上った。
2014年に子どもの貧困対策推進法が施行され、昨年の改正で貧困解消へ困窮家庭を支える団体へ財政支援することも明記されたが、現にいる食べられない子どもたちの存在は、公の支援が足りていない証拠だろう。
怒らず美しい花が実となるように志を充実させ、大きな木のように思いやりの深い愛の枝を繁(しげ)らせて、人をその木陰に憩わせるような姿勢で生きよ-。医心方の夏の心得はこう続く。フードバンクへの寄付など私たちができることがある。気力もおなかも満ちる夏休みでありますように。(衣)