日経平均株価の終値を示すボード。昨年7月以来約1年ぶりの高値水準を付けた=23日午後、東京都中央区
日経平均株価の終値を示すボード。昨年7月以来約1年ぶりの高値水準を付けた=23日午後、東京都中央区

 「まだまし」という言葉は、以前の状態と比べて何らかの改善が見える状況や、他の選択肢よりは良いという相対的な評価を示す際に用いられる。「不満は残るが我慢できる程度」との意味合いが強く、妥協の末の承認と言えそうだ。

 停滞していた日米関税交渉が急転直下で合意した。米側は25%と宣言していた日本に対する相互関税を15%に引き下げる。経済へのマイナス影響が軽減すると好感され、日経平均株価の上げ幅は一時1500円を超えた。「25%よりまだまし」という表れだ。

 とはいえ第2次トランプ政権発足前に比べ、高水準なのは変わりない。関税引き下げの代償として米国産米の輸入が増えれば、国内農家の存続も懸念される。どれほどの影響が出るのか精査が必要だ。

 関税交渉の合意を受けて、参院選の大敗直後に続投の意向を表明した石破茂首相(自民党総裁)の進退が改めてクローズアップされている。自民党内では続投表明に反発が広がり、苦戦を強いられた議員や地方組織から辞任要求が続出。引責辞任の突き上げは激しい。

 執行部からは「下野もあり得る。選択肢の一つだ」との声が上がっている。衆院に続き参院も少数与党に転落し、苦しい政権運営を続けるよりは、野党になって立て直した方が「まだまし」との判断か。既に「ポスト石破」も取り沙汰されている。「今よりまだまし」の選択では国民の期待は高まらない。(健)