部活とサークルは似ているようで違う。前者は規律の下で勝つことを目標とする。後者は同じ趣味を持つ仲間の集まりで、交流することに主眼を置く。私見だが、大きくずれてはいないだろう。
先日の本紙くらし面に、成果より楽しさを優先する「ゆる部活」が載っていた。部活のサークル化と言い換えてもいい。部活動の地域移行が進み、指導者が地域の競技経験者らに変わっていることが背景にあるという。教員とて、厳しい指導は時代に受け入れられなくなった。そう考えるとサークル化はますます進む。
ジュニア世代では「みんなが楽しめる」と補欠を作らず、登録選手全員がプレーする決まりのサッカー大会があるそうだ。全日本柔道連盟は勝利至上主義を問題視し、小学生の全国大会を廃止した。子どもたちは中学や高校で「部活」に進むだろうか。
高校野球の名門・明徳義塾(高知)の馬淵史郎監督の言葉を思い出す。「成功体験があって人間は成長する。苦しんで苦しんで最後に勝ったっていうのは大きい」。1992年夏の甲子園で対戦した星稜(石川)の松井秀喜選手を5打席連続敬遠にしたことでも知られる勝ちにこだわる名将だ。
高校総体、甲子園と熱い戦いが続く。勝つために、試合に出るためにもがき、時にぶつかり、たどりついた大舞台。試合に出られない仲間も思いを一つに戦う。ゆるくない部活の醍醐味(だいごみ)と価値を再認識したい。(史)