1985年に誕生したチャリティーソング『We Are The World』。エチオピアの飢餓救済を目的に制作され、団結と連帯を世界に呼びかけた。作詞・作曲はマイケル・ジャクソンとライオネル・リッチー。トップアーティストが集結し、多くの国で共感が広がった。
40年後、世界は様変わりした。トランプ政権で進む米国の自国第一主義、各地で続く紛争。日本社会も分断の足音は日に日に強まり、参院選では苦しい暮らしと将来不安を背景に、政治への不信が表面化した。
争点となった就職氷河期世代や外国人政策、地方と都市の格差…。分断が進み、やり場のない怒りや不満が向かう先はどこか。ロックバンド、ザ・ブルーハーツの『TRAIN-TRAIN』にある<弱い者達(たち)が夕暮れ さらに弱い者をたたく>の歌詞が頭に浮かんだ。
交流サイト(SNS)を通じて先鋭化する対立。情報は早くなる一方、時に感情があらわになる。ストレートな言葉で訴える政党や政治家が怒りや不満の受け皿となり、社会が培ってきた連帯の土台が揺らぐ。
『We Are The World』は曲名が象徴するように、あらゆる垣根を越えて支え合うことの大切さを訴えた。<僕らこそがもっと明るい日にできる だから分け与えよう>。共感と連帯。政治、日本社会、そして世界が大きな岐路に立つ中、40年前のメッセージをかみしめている。(添)