2014年3月にあったソチ冬季パラリンピックの閉会式では、粋な演出が注目を集めた▼冒頭に登場したのは「不可能」を意味する「IMPOSSIBLE(インポッシブル)」の巨大な文字。すると、車いすのアスリートがロープを15メートルよじ登って、その文字に到達。「I」と「M」の間に入りアポストロフィー「’」を自ら形作った▼浮かび上がったのは「I’M POSSIBLE(アイム・ポッシブル)」の文字。POSSIBLEは「可能」の意味で、開催国ロシアのドミリー・コザフ副首相は「私たちは『不可能は可能にできる』ということを改めて信じることができた」と大会を振り返った▼先月リモートの講演会でソチの様子を紹介した日本パラリンピック委員会の鳥原光憲会長は「パラスポーツのファンづくりが『心のバリアフリー』を育む」と訴えた。障害があるからスポーツは不可能ということはない。可能性を妨げているのは社会的な障壁(バリアー)、施設や制度、意識面で分け隔てのある社会環境だという▼五輪に続いて、東京パラリンピックがきょう開幕する。山陰両県からは車いすテニス男子の三木拓也選手(出雲市出身)、陸上男子100メートル(脳性まひT33=車いす)の安野祐平選手(米子市出身)が出場する。世界のパラアスリートたちの熱戦にエールを送り、可能性を妨げる社会的バリアーを打ち壊す好機にしたい。(健)