夏バテの時季だが、この人の場合はどうだろう。一見無縁のようだが、本当はかなり疲れているのではないか。菅義偉首相が、公式な場で原稿を読み飛ばしたり、読み違えることが多くなっている。今に限ったことではないという声もあるが、最近は重要な箇所がすっぽり抜けたり、鍵となる言葉を言い間違えたりするなど、聞いている方が混乱してくるエスカレートぶり▼広島の平和記念式典では、用意された原稿で「唯一の戦争被爆国」を読み落とした上「核兵器のない世界に向けて力を尽くします」をスキップ。滑舌のせいか「広島市」を「ひろまし」、「原爆」を「原発」のおまけも付いた▼17日の記者会見では「新型コロナ感染拡大を最優先に」と国民の耳を疑わせたかと思うと、アフガニスタンからの米軍撤退問題を問われて、アフガニスタンの首都を「タリバンの首都」、「今後の情勢」を「今後の情熱」▼言い間違いにすぐ気付いて言い直した部分もあったが、原稿棒読みの習慣に「早く終わらせたいとの気持ちも働いたのでは」と〝忖度(そんたく)〟する向きも▼菅首相は3月28日を最後に休日を取っていないという。コロナ対策に手を焼き、大雨被害復旧に追われ、秋までの自民党総裁選、衆院解散・総選挙に迫られる。地元の横浜市長選では支援した候補が敗れ、求心力低下は避けられない。秋口になってどっと疲れでは国民はもっと疲れる。(前)