耐え難い夏の暑さが訪れると、私は涼を求めて大山へ向かう。といっても急な山道を登るのではなく、大山寺周辺の緩やかな部分を散策するのだ。これらの道は涼しい山々の空気を存分に味わうことのできる爽やかな逃避行だ。スコットランドの作家ナン・シェパードはこう指摘する。「ハイキングは頂上に到達せずとも大きな満足感をもたらす」。この真実を私は深く大切に思うようになった。

 彼女の著書『ザ・リビング・マウンテン(邦題:いきている山)』は、...