テニスの全米オープン車いすの部男子シングルスで優勝し、喜ぶ小田凱人選手。四大大会とパラリンピックを全制覇する「生涯ゴールデンスラム」を達成した=6日、ニューヨーク(共同)
テニスの全米オープン車いすの部男子シングルスで優勝し、喜ぶ小田凱人選手。四大大会とパラリンピックを全制覇する「生涯ゴールデンスラム」を達成した=6日、ニューヨーク(共同)

 車いすテニス選手の小田凱人さんは思ったそうだ。なぜ障害がある人だけが車いすテニスをやっているのだろう、と。

 「車いすでない人も車いすテニスができる大会を開きたい」。そのためにテニスクラブや小学校に車いすを贈りたいという。全米オープンを制し、四大大会とパラリンピックを全制覇する生涯ゴールデンスラムを達成した帰国後の会見で構想を明かしていた。「車いすテニスをポピュラーなスポーツにする」と豪語する19歳の最強プレーヤーが語った「勝ちたいより、変えたい」という言葉が、耳に残っている。

 こちら5人の本心は、逆の「変えたいより、勝ちたい」だろうか。「#変われ自民党」のキャッチフレーズが掲げられた党総裁選で、総理のイスを狙う候補者たち。解党的出直しを叫ぶわりに、政治不信を招いた元凶の「政治とカネ」の問題は語ろうともしない。

 候補者の顔触れは変わらず、政策や主張もどれも似たり寄ったり。新味や独自色で攻めのショットを打ち込むことはせず、持論を封印してまで失点を防ぐ論戦は、退屈な長いラリーを見させられているよう。それこそ勝つために、候補者が気にかけているのは国民の反応というよりは、党内情勢なのだろう。もっと言えば、まとまった票を動かせる旧派閥や重鎮の意向か。

 「勝ちたいから、変えない。変えられない」。そんな候補者たちの本心が聞こえてきそうである。(史)