将棋戦術書の名著が再出版された。1992年初版の『羽生の頭脳』で、羽生善治九段(55)が棋界の第一人者になりつつある時期に書いた全10巻の大作。9月の1、2巻に続き、3巻が出る頃だ。
92年は囲碁将棋では今や人間を追い越した人工知能(AI)はおろか、インターネットも未知。チェスの世界王者がスーパーコンピューターに敗れて驚いたのが97年だった。チェスとは違い、持ち駒を再活用する将棋の複雑さから楽観的な棋士が多かったが、羽生九段は以前、機械が達人を破る日を問われ「2015年までに」と答えたという。人間の弱点、機械の強みと成長速度を読んでの“正着”だった。
AIは多方面で人をしのぎ、頼れる存在になる一方、依然として脅威ではある。
先日、松江市内でコミュニケーション戦略研究家・岡本純子さん(58)の講演を聴いた。「AI時代を勝ち抜くポイントは何かをAIに尋ねた」という自虐気味な話題でスタート。“AI先生”はコミュニケーション力、創造性、学び続ける意志の3点を挙げたという。
学び続けるのは読書量に関係しそうだ。語彙(ごい)力、表現力、本の中に転がる新発見の数々。個人で磨くことができる。量でAIに勝てずとも、人には感動する能力がある。そう思い『羽生の頭脳』を開くと、簡潔な解説文に沿って示される好手の数々。読書の秋は冬になりそうだが、感動しつつ盤に局面を並べる。(板)













