1971年から毎月、奥出雲町社会福祉協議会に匿名の寄付金が欠かさず届き、50年の節目を迎えた。「アコ」と名乗り、これまでの寄付総額は340万5千円。福祉車両の購入に充てたほか、花を育てて町を彩る運動が芽生えた。手紙の筆跡から複数人が関わっているとみられ、息の長い善意の取り組みに関係者は深く感謝する。10月には記念行事を開き、善意をたたえる。 (清山遼太)
旧仁多町社協時代の71年4月、「社会福祉の一助に」と一言添えた千円札1枚が届いたのが、始まりだった。その後も毎月、届くため同年11月に社協が「基金として積み立てたい」と広報誌で呼び掛け、名前を尋ねたところ「『アコ』としてください」と手紙が返ってきた。
奥出雲町社協によると、時がたつにつれ月々の寄付額は2千円、3千円、5千円と徐々に増え、2013年8月以降は毎月1万円が寄せられる。筆跡からは女性とみられ、広報誌の呼び掛けに応じたことから町内在住者と推察されるという。20~30年前から筆跡が変わっており、近しい人が引き継ぐなど複数人が関わっている可能性がある。
1983年には基金の利息を使ってサルビアやマリーゴールドの花を育て、町を彩る活動が仁多中学校生徒の発案で始まった。2009年には10人乗りの福祉車両を購入。「アコまごころ号」と名付けられ、介護予防サロンを利用する高齢者の送迎に今も活躍する。
記念行事は10月30日、町民体育館(三成)で開催。受賞者のいない壇上でアコさん宛ての表彰状を贈る。寄せられた手紙の封筒もパネルに入れて展示する。
社協の山本勝昭会長(78)は「本当にありがたい。支え合い、寄り添って暮らすまちづくりを考えさせられた」と話し、助け合いの輪が町民に広がるよう願う。