ビジネスモデルについて話し合う創業塾の参加者=出雲市今市町、出雲市役所
ビジネスモデルについて話し合う創業塾の参加者=出雲市今市町、出雲市役所

 出雲市などが主催し、今年で7回目となる「創業塾」は初めて定員30人を超える応募があり、35人が受講する。このうち10人が飲食業を希望。出雲市小山町の宮前貴子さん(48)は、数年前から飲食店の開業を考えており、新型コロナ禍で勤める飲食店が休業する中で、改めて開業に向けた勉強を始めようと応募した。「学ぶ時間がある今だからこそ準備しようと思った」と語る。

 このほか同市大島町の田原めぐみさん(43)は、一対一で接客する完全予約制の美容室の開業を目標とする。「コロナで求められている形態があり、開業のチャンス」と捉える。

 しまね産業振興財団などが実施する「しまね起業家スクール」の応募も定員の30人を超えた。

 島根県よろず支援拠点では、2019年に約300件だった相談件数が20年には2倍の約600件に増加。コロナで起きた潮流を象徴するように「Uターンして起業したい」「副業で取り組んでいる仕事を本業として立ち上げたい」など、これまでなかった相談が寄せられた。初期費用を抑えて始められるキッチンカーやテークアウト事業を検討する人の多さも増加の一因という。

 渡部剛史チーフコーディネーターは、リーマン・ショックや東日本大震災後も起業ニーズは高まったと指摘。コロナ感染が拡大する未曽有の事態下で人生を見つめ直す人が増え「何か新しいことをしなくてはという心理が、起業のきっかけになっているかもしれない」と話した。 新型コロナウイルス禍で、島根県内で起業を目指す動きが活発化している。自治体などが実施するセミナーには定員を上回る応募があり、テークアウト専門店や一対一で応対する個人美容室など、コロナに対応した事業計画が目立つ。地方回帰のUターン起業や副業で独立を志すケースもあり、増加要因となっているようだ。 (平井優香)